躰道の稽古の前や、大会の時に正座してみんなで唱えたりする
「躰道五条訓」について解説します。
躰道五条訓とは
躰道の考え方では、技の向上と同時に人としても優れた人になる事を目指しています。
稽古の時はもちろん、日常生活でも技と人間性の双方を高める為の心得として
「躰道五条訓」というものがあります。
躰道五条訓とその内容
(1)
一、心明鏡にして諸行の実相を写し
心位正しきを得れば惑わされることなし
(ひとつ、こころめいきょうにしてしょぎょうのじっそうをうつし
しんいただしきをえればまどわされることなし)
常に自らの心の状態を、くもりのない明るい鏡のように邪念を捨て、素直に保ち続けることが大切である。そうすれば、社会のなかで起るさまざまな出来事や相手の動静に対して、その本質が何であるかを見極めることができる。そのような正しい心の状態は、実技の攻防においてはもちろん、身の回りに何が起きても動転したり迷いを生じさせたりするようなことはないものである。
(2)
一、態端正にして心形の一体を図り
態位正しきを得れば侮られることなし
(ひとつ、たいたんせいにしてしんぎょうのいったいをはかり
たいいただしきをえればあなどられることなし)
常に自らの身なりを整え、行儀作法を正し、立ち居振る舞いに無理や無駄がないようにすることが大切である。そうすれば、心と外に現れる行動の一体化を図ることができ、そのような正しい姿態の状態を保っていれば、相手に軽くみくびられたり、ばかにされるようなことはないものである。
(3)
一、気充溢にして精気を丹田に発し
気位正しきを得れば恐れ戦くことなし
(ひとつ、きじゅういつにしてせいきをたんでんにはっし
きいただしきをえればおそれおののくことなし)
常に自らの気力を満ちあふれさせることによって、天地の気(精気)を丹田に集めることができ、そこから気力を出すことができる。そのような正しい気の用い方を修得すれば、肝がすわり、いかなる相手の動静やさまざまな出来事に出会っても、決して恐れたりひるむようなことはないものである。
(4)
一、行実践するに倫理の常道を守り
行位正しきを得れば誤り行うことなし
(ひとつ、ぎょうじっせんするにりんりのじょうどうをまもり
ぎょういただしきをえればあやまりおこなうことなし)
常に自らが行為行動を起こすときには、人の行うべき人倫の道に従うべきである。そのような正しい行動をしていれば、決して間違った行為や過ちを犯すようなことはないものである。
(5)
一、技応変にして身体を自在に移し
技位正しきを得れば制されることなし
(ひとつ、ぎおうへんにしてしんたいををじざいにうつし
ぎいただしきをえればせいされることなし)
常に自らの技は相手に応じて変化させ連動連鎖しながら用い、運足運身を自由に駆使して目標となる体を処理し応変実動することが大切である。そのような正しい実技を体得すれば、相手の攻撃を受けたり制されるようなことはないものである。